アトピー性皮膚炎が急に悪化する原因10選。悪化させない方法も解説
- みらいクリニック大阪北浜 院長
- 5月27日
- 読了時間: 10分
アトピー性皮膚炎を悪化させる原因にはさまざまなものがあり、人によって原因は異なります。かゆみが強い場合には精神的にも悪影響を及ぼすことが知られており、睡眠障害の原因になることもあります。
アトピー性皮膚炎にお悩みの方は、大阪市中央区のみらいクリニック大阪北浜にご相談ください。

アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎とは、アレルギーが原因で表皮の主に角質層に起こる皮膚炎の一種で、特徴的な症状としては乾燥・赤み・かゆみ・湿疹があります。乾燥することで皮膚がカサカサになり、炎症によるかゆみで掻きむしってしまうとかさぶたができて皮膚が分厚くなりより症状が悪化します。
子どもと大人で同じように症状が出るわけではなく、年齢によって発症しやすい部位に違いがあります。乳児では主に頭や顔から発症し体幹に広がってくることが多く、幼児では首や手足の関節に症状が強く出ることが多く、思春期以降では上半身(頭から体幹にかけて)に症状が出やすいとされています。
アトピー性皮膚炎を発症している方の多くに家族歴・気管支喘息・アレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜炎があったり、IgE抗体を産生しやすい体質(アトピー素因と言います)を持っていることが知られています。
アトピー性皮膚炎が急に悪化する原因
自分でなんとかできるものから自分の力ではどうしようもないものまで、アトピー性皮膚炎の症状が悪化する要因はたくさんあります。以下で細かくご説明します。
皮膚への刺激
例えばずっと同じ場所に何かが当たっていたときなど、アトピー性皮膚炎の方に限らず、皮膚は簡単に炎症(赤くなったり)を起こします。
アトピー性皮膚炎の方は皮膚が過敏になっている状態ですので、衣類からの刺激(レースが触れている・ゴムに締め付けられているなど)や、首回りに髪の毛が触れているだけでも症状が悪化することがあります。
目に見えないものだと、シャンプーや石鹸のすすぎ残し(わずかに残った成分が皮膚を刺激することも)・日焼け(日光による刺激)なども悪化の原因になることがあるので注意が必要です。
季節の変化
日本は四季があるため、季節の変化に伴って環境が大きく変化します。気温だけでなく湿度も大きく変化しますし、時期によっては花粉も飛散します。それらが身体に対して直接刺激になって症状が悪化することもありますし、それ以外に環境の変化が精神的に負担になることもあります。
季節の変わり目で気分が落ち込んだり憂鬱になることもありますが、そういった時は体調もすぐれないことが多いと思います。精神と身体は密接に関係しているため、そのような場合にもアトピー性皮膚炎は悪化することがあります。
乾燥
皮膚の角質層は細胞が何重にも重なっていて、バリアの役割を果たしています。しかし、水分が失われて皮膚が乾燥するとこの角質層の細胞が徐々にはがれて隙間ができていき、皮膚のバリア機能が低下し、刺激を受けやすくなります。
そのため、保湿が不十分だったり、季節の影響で肌が乾燥してしまった時には、アトピー性皮膚炎が悪化しやすいといえます。乾燥しやすい時期にはこまめに保湿剤を塗るようにすることで、症状の悪化を予防するようにしましょう。
汗
汗は体温調節や老廃物の排出に必要な機能ですが、そのまま放置しておくと刺激となることがあります。特に子どもなど皮膚の弱い方は、夏になって汗をかくようになると汗疹(あせも)ができることが、イメージできるかと思います。
そのため、汗をかいたと思ったらできるだけすぐに洗い流したり拭き取ったりすることが大切です。強く洗いすぎてもよくないので、さっとシャワーで洗い流す程度にし、拭き取る時には刺激の少ない濡れタオルや赤ちゃん用のウエットティッシュなどを使用するのもよいでしょう。
ダニやホコリ
日本における気温・湿度といった環境はダニにとって非常に適していると言われており、掃除が不十分であったりするとあっという間に増えてしまいます。加えて換気しない環境ではハウスダストも溜まりやすくなり、見えないながらも様々な物質が部屋の中に充満していくことになります。
ダニやホコリがたまらないように、こまめに掃除や換気を行うことは大切ですし、そもそもダニやホコリが付着しにくい部屋にしておくことも重要です。絨毯よりはフローリングを、布製品よりは革製品を選ぶとよいでしょう。
血行
血流が悪化すると自覚症状として起こりやすいのは冷え性です。これは血流量が減ったことにより手足の先端まで栄養分が届きにくくなり、エネルギーが不足して起こります。身体のすみずみとしての手足の先端もそうですが、血行不良の状態になると身体の表面に当たる皮膚にも栄養が届きにくくなります。
すると皮膚の細胞がはがれやすくなり、バリア機能が失われてしまいます。適度に運動しバランスよく筋肉量・血流量を保つことで、症状の悪化を防ぐことができる可能性があります。
一方で入浴や激しい運動で体温が上がり、一時的に血流が良くなりすぎることで炎症が強くなりかゆみがひどくなる場合がありますので注意が必要です。
疲れ
疲労そのものがアトピー性皮膚炎を悪化させるかというと、必ずしもそうではありません。しかし、疲れた時には体調がすぐれない、といったことは誰しも経験があるように、例えば末梢の血流が悪くなったり、お肌の調子が悪くなったり、疲れの原因は睡眠が不足していたことであったり、様々なことと関連しているのも事実です。
その結果としてアトピー性皮膚炎の症状が悪化することは十分にあり得ますので、疲れを感じるようであれば可能な範囲でゆっくり休息をとって、心も体も休めてあげるのが一番の解決策かもしれません。
ストレス
緊張したりストレスを感じると、自律神経のうち副交感神経より交感神経の働きが強くなります。交感神経が優位に働くと、皮膚が乾燥しやすくなりバリア機能が低下する結果、刺激に対して脆弱になってしまいます。
また、ストレスを感じている時や物事がうまくいかない時、人は無意識に皮膚を掻きむしってしまうことがあります。これもアトピー性皮膚炎を悪化させる原因となります。ストレスを感じた時は要因を遠ざけたり、一休みしてリラックスするように心がけましょう。
食生活
種類にもよりますが油分の多い食事は炎症を起こしやすくなると言われており、アトピー性皮膚炎の悪化の一因となる可能性があります。我々が普段から口にしている油分の多くはオメガ6脂肪酸であり、代謝されて炎症の原因となるアラキドン酸になることが知られています。ポテトチップスなどの油分の多いお菓子はこういった成分を多く含んでいるため、控えるようにした方が良いでしょう。
睡眠
起きている時と寝ている時では分泌されるホルモンの量と種類が変化します。睡眠中に多く分泌されるホルモンのうち、成長ホルモンは皮膚の修復に関与することが知られています。怪我や乾燥、日焼けなどにより破壊された皮膚を、寝ている間に修復してくれているわけです。
しかし、睡眠不足になってしまうとこの修復が十分に行われず、結果として皮膚のバリアが弱くなり、アトピー性皮膚炎の悪化につながることがあります。
喫煙
タバコと肌の症状には直接関連性がないと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、喫煙で末梢の血流が減少することが指摘されています。上にも述べた通り血流の悪化により、表皮の付近まで栄養分が行き届かなくなることで、皮膚の乾燥が進みバリア機能が弱まってしまいます。
また、タバコの煙に含まれる粒子も肌への刺激となるため、吸っている本人だけでなく一緒に住んでいる人にも影響が出る可能性があります。
アトピー性皮膚炎を悪化させないポイント
アトピー性皮膚炎の原因が明らかな場合は、その原因(物質・環境)を除去することが最も効果的です。しかし、アトピー性皮膚炎は原因が明らかでない場合や、複数の要因が重なっていることもありますし、原因がはっきりしていたとしてもその除去が困難な場合もあります。そういう場合でも、ちょっとした生活習慣の工夫で症状が改善するかもしれませんので、試してみて下さい。
まず食事はできるだけ健康的なものを心がけましょう野菜(食物繊維)や発酵食品をバランスよく取り入れ、揚げ物・炒め物(油分)は少なくなるようにしましょう。
次に室内の掃除・洗濯の頻度をあげてみましょう。特に絨毯を敷いている場合は掃除機をこまめにかけることが望ましいです。フローリングの場合は、換気の前に拭き掃除から始めることで、ホコリが空気中に舞うことを抑えられます。
そうしてきれいになった部屋で、普段より少し早めに寝るようにして、睡眠時間をしっかりとるのがよいでしょう。
最後に、もしタバコを吸う方の場合は、禁煙してみてください。家の中で吸わなかったとしても、花粉やホコリと同様に吸っていた時の衣類に付着した化学物質は、衣類と共に家の中に持ち込まれて、三次喫煙として本人だけでなくその室内にいる人にも作用することが知られています。
ご自身で禁煙に挑戦してうまくいかなかった場合は、当院の禁煙外来を利用するのもおすすめです。
アトピー性皮膚炎の治療方法
一般的にアトピー性皮膚炎の治療は外用薬から開始されることが多いです。軽度の症状によく処方されるものとして、保湿剤・ステロイドがあります。保湿剤を適切に使用し皮膚の状態を良好に保つだけでも症状が改善する方は多くいらっしゃいます。症状の再燃を抑えるためにも保湿剤を使用すること(使用し続けること)は非常に重要です。
部分的に症状が強い場合などにはステロイドも併用します。ステロイドの強さはweak(弱い)・medium(普通)・strong(強い)・very strong(とても強い)・strongest(最も強い)の5段階に分類されます。症状や部位により使い分けますので、医師からの指示に従って適切に使用してください。「手元にステロイドがあったので塗ってみたのですが・・・」という方が時々いらっしゃいますが、使用方法が間違っていることがよくあるので、やめておくことをお勧めします。
また、内服薬を併用することもあります。抗ヒスタミン薬でアレルギー症状を抑制したり、外用のステロイドでは効果不十分な場合などには内服のステロイドを使用することもあります。ステロイドの使用に嫌悪感を抱く方もいらっしゃいますが、基本的に使用し続けるものではなく一時的な使用であり、適切に使用すれば副作用も最小限に抑えられます。
アトピー性皮膚炎にお悩みの方は、大阪市中央区のみらいクリニック大阪北浜にご相談ください
当院を受診された方には、まずこれまでの病歴と併せて薬剤の使用歴をお聞きします。どの薬がよく効いたか、どの薬が合わなかったのか、こればかりは本人にしかわかりませんので可能な範囲で記録を残しておいてもらえると、当院に限らず受診時に役にたつでしょう。
お薬手帳でも構いませんしメモ書きでも結構です。今ではほぼ全ての方がスマートフォンをお持ちであり、ご自身の薬歴を管理するアプリもありますし、症状の変化についても手軽に写真を撮って記録できると思います。
また、皮膚の症状を写真で記録しておき、症状が悪化した時の様子も撮っておいていただき、少しでも多くの情報をご提示いただけることが、辛い症状を緩和する何よりの手助けになります。症状のこと・お薬のことでお悩みの方は、みらいクリニック大阪北浜までご相談ください。
Comments